「笹子トンネル事故について」

笹子トンネルの天井板はなぜ崩落したのか。落ちるべくして落ちた。

そもそも天井板は何故水平でなければならないのか。

頭を柔らかくしたら、天井板が絶対落ちない方法が見えてくる。

12月2日()朝の中央道笹子トンネル天井板崩落事故ニュースにつづく事故状況の写真と構造解説を聞いて、とても違和感を憶えました。 

トンネル内に天井を設けて天井裏を送風・排気ダクトとする。

そこまでは分かるが、何故平らに天井板を敷き詰めるのか。

そこが分かりません。トンネル設計者の発想とは思えないからです。 

 

トンネルは何故丸いのか。断面構造の円や楕円が、力学的強度の点で卵の形がモデルになっていることは世間一般に知られていることです。あらゆる方向からの外力が多方向に分散されて各部分にかかる力が小さくなるのです。

 

トンネルの天井板は吊り金具と天井上部にねじ込んだアンカーボルトによって支えられていたが、そのボルトごと落下しているとニュースは伝えています。 

垂直に挿入したボルトが未来永劫そのまま存続する保証はどこにもありません

1枚1トンの天井板の重量が掛かってボルトは絶えず地球方向に引っ張られており、

ボルト保持力と引力との力比べです。

 

事故防止のためボルトの老朽化を想定して検査するのは当然だが、それ以前の設計段階で天井板を水平に並べる必然性がどこにあるのか。

トンネル本体を卵形に設計した設計者の常識が、天井を設計する段になって突然変身しています。

天井は平らなもの、水平なものと決めてかかっているようです。 

少しでも上述のアンカーボルトの負担に思いを致すならば、初心に戻って、如何にしたら天井板を安全に設置出来るかを考えるべきでしょう。

 

石造りの水道橋や教会建築のドームなど圧縮持ち合い構造の伝統が古くからあります。天井を水平に保つことに固執しなければ、天井板が落下しない方法が見つかります。

左右両側からの天井板をわずかに長くして中央部で合わせると、中央が盛り上がって水平にはなれない。ゆるい八の字型・合掌型です。

落下しようにもコンクリート製天井板が突っ張って両側壁方向に力が掛かる仕組みです。

もちろん左右両方からの天井板の合わせ目には、ずれ防止のエの字型鋼材を挟み、支持具とアンカーボルトも併用するが、かかる負荷は桁違いに小さくなります。

コンクリート板をほんの数㎝長くするだけでよく、天井裏の点検で歩けないような斜面にはなりません。

 

関門トンネルの天井裏点検で支持具の歪みや破損がいくつか見つかり取り替えたとの報道もあります。

トンネル工学の専門家の間でそんな情報交換がないのでしょうか。

 

また、天井板の落下が1枚にとどまらず130メートルにわたって崩落したのは、隣り合う板同士が溶接されていたとのこと。これは阪神淡路大震災時の阪神高速道路高架の倒壊と全く同じ理屈です。

それは道連れ倒壊とも云うべきもので、互いにくくりつけられたものは一つ転ければ隣へ隣へと倒壊が伝播するのは当たり前です。

これは、去年6月の研究会で報告した『ポータブル―自立と紐つき』の紐つき事例に該当しますが、この道連れ倒壊は、金融界の連鎖倒産と全く同じ理屈(等価関係)です。

ボルト締めは、一本破損すると隣り合うボルトに負荷が掛かり、次々破損が伝搬する経験は造船の世界でも知られているようです。

 

こういうことが分かれば、隣同士の天井板を無闇に溶接して一体化すべきではなく切り離しが必要です。それでも通行車の振動によるズレが心配なら、いくつかの天井板をブロック化して隣同士のブロックを遮断しておけば130メートルも崩落することは避けられます。

 

いずれにせよ、万一の事故を視野に入れる能力のある設計者が必要です。

笹子トンネル事故で、専門家は想定外の事故とテレビの前で発言しています。

「想定外」とは「想像力の欠如」と同義語です。                              

                                               以上

〔投稿者:今井 滋郎〕