Ⅲ等価変換フローチャート(ETチャート)

3-1.Q: 演習で過去の自分の開発例をフローチャートに載せる意味はあるのか。
 
    A: ⅰ)ETチャートに慣れる練習ですが、自分のよく知っているテーマのほうがやり易いのではないでしょうか。
 
 ⅱ)かつて自分が無意識的か試行錯誤的に考えてやったことと、一般的と思われる思考ルート(ETチャート)を比較してみるのは興味深いのではないでしょうか。
 
 ⅲ)チャートをある程度理解したと思ったら、併行して、現在取り組んでおられる開発テーマにも適用されたら良いと思います。
 
 ⅳ)自分たちの演習例の蓄積は企業にとっても後輩への教材に成りえます。今後とも社内で蓄積されれば、説明資料とETチャートのセットの集積は発想法の知的財産です。
 
3-2.Q: 各種発想法をチャートのどこで使うと効果的か。
 
    A: 各種発想法の多くは商品開発、改良で使っているようです。ETチャートでは①´から①の部分です。希望点列挙法とか欠点列挙去などです。またブレーンストーミングは、①´から①のとき、viを出すとき、Aοを探すとき、に限定して他人の知恵を借りるのに使えば効果的でしょう。
 
3-3.Q: 一直線に発明できた場合がある。ETチャートに載っているかどうか不明。
 
     A: 一直線に発明できればそれが最高です。うまくいかない場合に意識的に使ってみてください。
 
3-4.Q: デジィタル・ルートが分かりにくい。
 
     A: ③´の Σbは現実の物の形にするためには必要なことで、現場の技術者にとっては当然のものです。気にすることはありません。ましてその上の②´はそれらを含んだ専門知識ということです。ともに「専門知識群」の1語で済ませる場合もあるぐらいです。他の人のためにこの専門知識がポイントでした、というものを書けばよいでしょう。
3-5.Q: vi(観点)とε(本質)は、ケーススタデイを見る限りでは名詞か動詞か、という以外、ほとんど同じに見えますが、実際にETチャートを埋める際、同じようなものと考えてしまって差し支えないのでしょうか。
 
    A: その考え方でいいでしょう。少し付け加えれば、εは表現に人による差がほとんどないのですが、viは内容に幅があるので、人により少し違いが出るのです。例で説明します。
 
図解本のテーマ26、島津式鉛粉製造機の事例。viを(a)「鉛のブロックをこすり合わせて粉にする」 → (b)「固体ブロック群の粉末化」→ (ε)「固体ブロック群を粉末化する」
 
viの2つの表現で(a)はかなり具体的に考えていて、そのままviとしています。(b)はこれを抽象化して表現したものです。抽象化が進んでいるのでεとほとんど変わりません。εと区別するため名詞でとめているだけです。要するにa,bともに思考過程は同じなのですが、表現として具体と抽象のどの辺におくかで若干個性が出るのです。
 
3-6.Q: a.ETフローチャートの到達点(?)はどこか。
 
b.特許をフローチャートにあてはめるのは難しかった。Aοが思いつかなかった。等価変換を使用している気がしなかった。 
 
c.Aοは考え付くことのほうが稀。たいていの発明はそれをやらずにやってきた。
 
d.等価変換理論の得意とするところ、苦手とするところはあるか。
 
    A: この4人の意見は重なっている部分があるのでまとめて答えたい。
 
まずロシアのアルツシュウラー(TRIZの提唱者)が既存の特許を分析し、特許のランク付けをしています。
 
「第1レベル:その専門分野の一般的な知識を用いた解決。改良発明。(自分の技術による解決。) 全体の32%。
 
第2レベル:既存システムに機能を追加した改良。(自社の技術による解決。) 全体の45%。
 
第3レベル:既存システムの抜本的な改善。(同一業界の技術による解決。)全体の18%。
 
第4レベル:新しい概念の創造。(異分野、他業界の技術による解決。)全体の4%。
 
第5レベル:今までにないものの発明・発見。電話、ラジオ、レーザーなど。全体の0.3%。
 
第4、第5レベルがブレークスルーに該当する発明。 第5レベルはほとんど偶然と模倣(この表現で言わんとするところは類推的思考と思われる)による。」
 
 
さて、等価変換理論は市川先生が結果的にはここで言う第4、第5レベルの発明を分析して、思考過程を明らかにしたものです。従って目指すものも当然、第4、第5レベルのものですが、その時期に、そこと関連した部署にいるなど、タイミングが合わなければ、その力があってもブレークスルーの発明者にはなれません。一生に1,2度あれば上出来ではないでしょうか。その少ない可能性のために訓練するのか、となりますが、そのとおりと言う他ありません。しかしオリンピックで金メダルを目指して訓練している人は、地方大会では簡単に優勝できるでしょう。同様に日常的開発は楽にこなせるのではないでしょうか。
 
第1レベル、第2レベル合わせて77%です。これは多くの発明が専門技術・知識の駆使によっていることを表しています。フローチャートではもっぱらデジタルルートを使って処理しておられることになります。皆さん方の発明の多くも同様だと思います。
 
もともとアナログルートを使っていないわけですからAοを探すのが難しいのは当然です。チャートに慣れる練習と割り切って、アナログルートで考えたらどうなるだろう、という立場で考えてください。
 
等価変換理論の長短も以上から分かります。ブレークスルー的開発を目指した発想法ですが、常に、何処にでもチャンスがあるとは限らないことです。また専門情報の駆使による開発にはチャートにデジタルルートと位置づけているだけで、特に発言していません。
 
チャートを使わなくても開発できる時はあえて使う必要はないのです。